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祭りの終わり [詩]

怠いです 重いです 起きているのがしんどいです。


4月26日 ゴールデン街5番街 新子 の緞帳が これ以上ないという賑やかさの中で 降りました。


10年間のバー営業に終止符を打ちました。


4月29日 令和の2日前に72歳になりました。


老いは容赦ない。私の体もボロボロになりました。


普通の飲み屋の歴史なんか書く気ありません。


私は生きたのです。生かされた。


出会い出会い出会い


心地よい出会い 山のようにありました。


ありがとうは数限りない。


しかし それと同時に殺してやりたいような不快な出会いも山のようにありました。


飲み屋はそんなに楽しいばかりの商売じゃないよ。はっきり言っときます。


さて 先に進みます。


しおんはあと10年は生きるでしょう。


だから私も あと10年生きます。



これ以上ない静けさの中で 今はモーツァルトに背中を押してもらっています。


しおんは一つあくびをして私と視線を合わせました。



ま 朗読劇は いくつか演るでしょう。


昼間は眠るでしょう。


夜中になったら 気持ちが動く限り 文章を書くでしょう。



本当の 人生の緞帳が下りるまで。 


静寂と闇と無音の中で生きてみようと夢想している祭りのあとの


ひとつの終わりをむんむんする花たちに囲まれてカンパリソーダを吞んでいるまだ浅い夜更けです。






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カーミラ

もうすぐお日様顔出すよ


その前に


シルバーパープルのマニュキアをする


まつげをきれいにカールする


バラの花のヘアバンドつける   


ちょこっと香水つけてみる



すべてはあたしのために



猫をむぎゅっとする


アロエの洗顔フォームで顔を洗う


刻み生姜ののど飴舐める


急がなくちゃ


朝日が昇る


その前に


急がなくちゃ


月はどこ行った


今日の月は一つ


魔女にならなくっちゃ


急いで魔女にならなくっちゃ


時間がないのよ



すべてはあたしのために



何とでもお言い



すべてはあたしの為なのだから



夜明けの前はあたしの時間


ほっといて


朝が来たら黒いブラジャー着けて眠るから


ほっといて



すべてはあたしの為なのだから


あたしはあたし  ほっといて



あほなお前にゃなびかぬぞ



カーミラ

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アルル

嬉しくて  懐かしくて  ドアを開ける


何十年も深い眠りの森に棲んでいる人形たち


また来たのね  おいで  ここはあなたの場所なのだから




私の場所  ようやっと見つけたよ


逢いたかった 


座っていい? 黙って座っていい?


いいに決まってるでしょ ここはあなたの場所なのだから



阻害しないものたち



珈琲にする? ドライカレー?  それとも両方?


両方



あの子たち眠ってる  まるまって


私の脳もまるまってねむる


ほんの二時間  ほんの少し



舟?  そう舟    藁の舟



静かだね   静かの音するね



そんな店なの  アルル



みーつけた



誰にも教えてあげないよ



そんな店なの  アルル




わたしの秘密



みーつけた



誰にも教えてあげないよ



そんな店なの  アルル

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光明

ありがとう                                             69歳のお婆さんはとてもとても幸せで                                 たくさんの愛に包まれて                                       100分の1の恋慕                                        1000分の1だってかまわない                                   ショパンのノクターンで私の気持ちはどこまでもほどけていくのです                    しおんとの静かな何とも言えない静かな生活                               新宿の片隅で去年頂いたバラたちがドライフラワーとなって幸せを思い出させてくれる
少女のような100分の1の恋慕
1000分の1だってかまわない
安らかに眠れ
安らかに眠ってくれと祈る
お婆さんの生活は時として単調だけれど
そこに一筋の光明が私を確かに微笑ませる
確かに
何もいらない
もう何もほしくないのです
独りが清々しくて
しおんと暮らすのが清々しくて
微かな微かな愛さえあれば
ありがとう
私69歳のお婆さんです
繰り返し繰り返される日常
100分の1の恋慕が
1000分の1の恋慕が
生きることへの強い意志と変わるのです
生きます
もう少し
しおんを残して逝けないから
泣くこともなく
怒ることもなく
人生の冬の真っただ中で
掌の上で溶ける雪のように
100分の1の恋慕
1000分の1の恋慕
それは
光明

だから私は
生きます

息します


わたしの春は

三月の始まり
気温10度の真夜中
ガスストーブを弱く点ける

春の始まり

しかし私の青い春はもう来ない

いくつの季節を経験したのだろう
68回

68回の春夏秋冬が巡った

確かな春を激しく生きた

恋愛も失恋も演劇も音楽も言葉も感情も激しく青くそれは確かな春だった
青かった 青さを武器にした 私は美しかった 柔らかかった しなやかだった

夏は汗と情熱に漲った
降り注ぐ太陽に抗った 負けることはなかった
熱さが私の背中を押した 強く逞しかった

精神が崩壊しても戦う情熱は炎のように燃えていた
美しかった 強かった 怖いものはなかった 熟れ切った果実だった

秋は静かに勉強した
少しだけ青い春と暑い夏を振り返りつつ新しい世界に静かに挑戦した
疲れということを少し意識した しかし鋼のように跳ね返す弾力は持っていた
春と夏とは違う世界で肉体は紅葉したがまだ枯れはしなかった
歳を重ねて大人になることを楽しんだ

そして冬
今こそ冬の季節
体は朽ち次の春はもう永遠に来ることはない

過ぎたのだから 過ごして来たのだから

後悔なぞ一つもしていない

春も夏も秋も精一杯生きたのだから

今できること 年老いた私に出来ること を 緩やかに考えている
気負いはない だが まだ為すべきことは少しだけ残っているような気がする

正直体はもうついてこない しかし頭は清明だ

気負うことはない

年老いた私 二度と来ない春 

確実に待っているのは死

怖くはない いつでも受け入れる準備は出来ている

まだ為すべきことはある

年老いたからこそ出来る事

私の刃は今だ挑戦的だ


しおん

足元ので寝ている

私は68歳でもうすぐ69になる

しおんは2歳7か月

猫は一般的に15歳は生きる

私は後15年生きるのだろうか とても生きているとは思えない

しおんは人間は私にしかなついていないし他の人は一切受け入れない

しおんは私で私がしおんなのだ 二人で一人

うちに人が来たときはその時間どこかに隠れて絶対出てこない

人間で認めて心を許すのは私だけ

ああ 死ねない

しおんより先に死ねない

私が死んだらしおんはどうするだろう

きっと誰にもなつかないだろう

私がしおんでしおんは私だから

しおんを不幸せにするわけにはいかない

一人にするわけにはいかない

だからしおんが星になるまで私は死ぬわけにはいかないのだ

生きる意味がしおんを一人にしないというだけでも

それは一つの生きる意味かもしれない

だからしおんが星になるまで私は生きる

しおんを看取る

それが私の生きる意味だ

立派な意味だ


さんちゃん

三ちゃん あなたは今どこにいますか 良い風吹いてお花がいっぱい咲いてののやリリーもいて三人で仲良く遊んでいますか?
甘えん坊だったね 私にしがみつくのが大好きだったね

あなたに会いたい 抱きしめたい あなたの匂いを嗅ぎたい

三枚橋病院のデイケアで迷子になってたあなたと暮らしてたった12年であなたは星になってしまった

お外が大好きで跳ね回るのが大好きで美味しいお魚も一緒に食べたね 美味しかった

しおんが来てもいじわるしないで良いお兄さんになってくれたね

ゴールデン街で一緒に写真も撮ったね さすがにあなたはおびえてたけどあなたの写真は今でも店に飾ってあるよ 毎日眺めているよ ちょっとびっくりしておしっこちびったね ごめんね

大切な大切な12年間 いつも一緒に寝たね 気持ちよかったよ あなたのぬくもり 絶対忘れないから

最後の何か月かは11歳トロミにホタテの缶詰混ぜて抱っこしてご飯食べたね あなたは生きようと必死で食べた 頑張った

あなたは7月15日早朝押入れの布団の中で静かに息を引き取った その前の夜 私の布団に入ってきて隣で寝たね

ありがとうって言ってくれたの ありがとうって隣で寝てくれたの 嬉しかったよ

100万回のありがとうを私も言わせて下さい 100万回ありがとう 100万回ありがとう

あなたのお骨はダイニングテーブルの上で私を見つめています 優しい目をしているよ 私も優しい気持ちになるよ

でもあなたの魂は小さな肉体から解放されてとても気持ちの良い世界で自由にのびのびと遊んでいるんだろうね

待っててね 私も行くから また会えるよね 待っててね もうすぐだから

もう一度

100万回のありがとう 100万回のありがとう


記憶の始まり

太陽がまぶしかった。いつもの目線ではないから。都電の線路がぎらぎらと陽光に照らされて、おじいちゃんの肩車。高い。高い。世界が高い。身長80センチ程のの華奢な女の子が2メートルの世界を見渡している。おじいちゃんの背中は安心の場所。私の2本の足を温かくて無骨な手がしっかりと支えてくれていたから。私はその年期の入った無骨な腕に支えられ、その高い場所から信濃町の都電通りを空を滑るようにおじいちゃんに身をゆだねていた。見慣れた信濃町の景色がゆっさゆっさと眼下に揺れていた。それはおじいちゃんの歩調が私の体に伝わる感覚。おじいちゃんの息遣いと一つになる瞬間。右側が慶応病院で左側は蕎麦屋さんや荒物屋さんや小さな商店街が並んでいた。私は笑っていたと思う。おじいちゃんも笑っていたと思う。私は4歳ぐらいだろうか。おじいちゃんの禿げ頭に手を老いて笑っていたのだと思う。ぺんぺんと禿げ頭をたたいてアハハとのけ反って笑った。おじいちゃんもアハハと笑った。最初の記憶。最初の匂い。都電の線路道を歩きながら、おじいちゃんと私は信濃町の駅を目指していた。そこで省線を眺めるのだ。切符切りの車窓さんがいる小さな木造の駅だった。電車の色は多分茶色だったろう。ただ何十分も眺めていた。停車したり発車したり、まばらな人々が乗り降りしていた。それだけで楽しかった。大好きなおじいちゃんと一緒だったから。剥げて歯の抜けたおじいちゃんだった。 帰りに駅のそばの半畳ほどの駄菓子屋さんでアメリカの小さなガムを一粒買ってもらった。紙を剥くと英語で書かれたポパイの漫画が入っているガムだった。アメリカさんのチュウインガム。たった一粒のチュウインガム。甘い、香りのよい、歯ごたえのあるチュウインガム。よく噛んで舌の先で伸ばしてぷーっと息を吹き込むと大きく大きく膨らむチュウインガム。膨らんで膨らんでパチンと割れた。鼻とほっぺにくっついた。それがおかしくてまたアハハと笑った。

記憶にはないが、沢山のポパイの漫画を持っていたような気がするから、おじいちゃんの肩車は私たち二人の日常だったのだろう。至福の時だった。晴れ渡った清々しい初夏の思い出。

おじちゃんと私の秘密の時間。人通りの少ない信濃町の都電通りで二人だけの思い出は、どこまでも眩しかった。

 


毒舌婆

68歳になりました。

たくさんのお祝いメッセージを頂き本当にうれしい気持ちでいっぱいです。
心よりありがとうの言葉をお返しいたします。本当にありがとう。

でたらめバカのくそったれがよくここまで生きてきたもんだと自分のことながら他人事のようにびっくりしています。そうびっくりしているんです。68年ですよ。長いですね。長すぎます。

今必死で自分の人生の幕引きを考えています。もうそろそろ緞帳おろしても良いでしょう。問題は緞帳のおろし方。

ま、一応本も書いたし自分で最後と決めた芝居もしたしパンクバンドも決着つけたし私のミッションは終了したはずなのです。はずなのですよ。

残っているのはあと何年生きるか分かりませんが10年とちょっとでしょう。その位で打ち止めにしたい。
老人は疲れますからね。目も緑内障白内障だし心臓肺も苦しいし足は10年前に骨折しているのでちょっと歩くと痛いし何よりも老人性のうつですからね。もう笑っちゃいますよ。要するにボロボロなんです。

ぼろぼろでも死ぬまで這いつくばってでも生きねばなりませぬ。自殺はする気ありませんから。

でたらめバカのくそったれはでたらめバカのくそったれにふさわしい私らしい生き方を模索しています。
今更腰の低いまあるいばばあになる気はありません。そんなことすると自分の中にすとレス貯まって余計うつが酷くなります。

猫のように気ままに生きますよ。
毒吐いてね。悪態ついてね。
嫌われ新子の一生です。

多分それが一番私らしいと思っています。

わが まま


濁流

三太郎としおんの姿が見えない 一番気持ちの良い場所で寝ているのだきっと

 
厚意を身に余るほど頂いて私は胸がいっぱいでこんなに良くしていただいてとてもとても気持ちの良い夏と秋を過ごしている
言葉にならないことがあるたくさんある言葉は軽い陳腐で薄っぺらいだから沈黙する
沈黙は際限なく重くぐっと詰まっている厚いものと事がだから沈黙はもっと重くなる

あ 三太郎見っけた洗ったばかりのシーツの上
あ しおん見っけた電子レンジの上

67年という信じられない時間を生きたどろどろに生きたまだどろどろと生きている
これからもどろどろと生きるのだろう終われないでいるかっこつけるほど若くはないよ

LARKの1ミリを2箱吹かした最大の無駄でも吹かし続けるふとプカプカのメロディーがよぎる
もうあばずれではないさ私

音のない真夜中私の中には濁流が渦を巻く
頭や心臓や心や意識やたぶん魂なんかがどきどきする
どきどきするんですこれだけ生きてもだからまだどきどきしながら生きる
どきどきしているうちは生きていようと思う 

まだまだ這いつくばり方が足りない足りない足りない
まだ小僧です


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